アルミニウムダイカスト(コールドチャンバー方式)
技能士2級対策 工程別用語マップ

2025年3月17日 📌 監修:ダイカスト技能士特級
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材料準備/溶解工程 🔥

アルミニウムダイカストの第一工程。AC4C・ADC12などの合金組成680℃〜720℃の溶解温度管理が後工程の品質を大きく左右します!

合金化

複数の金属元素を組み合わせて合金を作る工程。特性向上を目的とする。

地金規格(JISH2211)

アルミニウム合金地金の日本工業規格。化学成分や品質要件を規定。

回収材

鋳造工程で発生したスクラップなどを回収して再利用する材料。

返り材(リターン材)

鋳造工程から回収され再溶解される材料。バリや不良品などが該当。

RSV法

回転真空鋳造法(Rotary Vacuum Casting)の略称。真空環境下で金型を回転させることで気孔を減少させる特殊鋳造法。

配湯法

溶湯を溶解炉から鋳造機へ移送する方法。手動取鍋、自動給湯などがある。

溶解工程では保持炉温度700±10℃の温度管理が重要です。アルミニウム合金は約750℃以上の高温では酸化消耗(約3%/時間)が急増し、約600℃以下では湯流れ性が低下するため、適切な温度管理が必須です。

反射型電気抵抗保持炉

電気抵抗加熱と熱反射を利用した溶湯保持炉。温度均一性に優れる。ダイカスト工場で広く使用。

酸化消耗

溶湯が大気と接触して酸化し、金属が失われる現象。750℃以上で加速し、歩留まり低下の原因となる。

⚠️ この工程で発生しうる不良:

  • 合金組成不良:Cu, Si, Mg等の成分のバラつきで機械的特性が低下
  • 不純物混入:Fe等の異物が混入し介在物欠陥の原因に
  • オシゲ:溶解炉の炉底に堆積する不純物(技能検定で重要)
  • 溶湯酸化:過度の酸化による歩留まり低下と品質劣化
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溶湯処理工程 🧪

溶湯品質の向上がこの工程の目的です!酸化物の除去と0.2ml/100gAl以下のガス含有量低減が鍵となります。

溶湯品質

溶融金属の純度や性状。合金成分、ガス含有量、介在物量などの総合指標。

渣(スラグ)

溶融金属表面に浮かぶ酸化物や不純物の総称。除去しないと鋳造品の品質低下を招く。

あかとり

溶融金属表面に形成される酸化物層(あか)を除去する作業。溶湯品質の向上に必要な工程。

あか落としベラ

溶融アルミニウム表面の酸化物(あか)を除去するための道具。金属製のへら状の工具。

溶湯ろ過法

溶湯を濾過して不純物や介在物を除去する方法。セラミックフィルターを用いる。

スピネル

MgAl₂O₄などの複合酸化物。溶湯中に生成すると介在物となる。

脱ガス処理はアルミニウムダイカスト品の品質向上の鍵です。水素ガスを0.1ml/100gAl以下まで効果的に除去することで、内部の気孔(ポロシティ)発生を大幅に低減できます。回転ノズル法が最も効果的です。

脱ガス処理

溶湯から溶存ガスを除去する処理。不活性ガス吹込みなどの方法がある。

水素ガスの溶解度

アルミニウム溶湯中に溶解する水素ガスの量。ポロシティ発生の主要因。

脱ガス機構

溶湯からガスを除去するための機構。回転子や多孔質プラグなどで構成。

減圧脱ガス

溶湯を減圧環境に置くことでガスを除去する方法。溶湯品質向上に効果的。

GF(Gas Free)法

ガスフリー法。溶湯中のガス量を減少させるための脱ガス処理法。

ランズレー法

金属中のガス含有量を測定する方法の一つ。技能検定での出題頻度が高い。

脱酸処理

溶湯中の酸化物を除去する処理。フラックス処理などが含まれる。

脱酸除渣

溶湯中の酸化物(酸化アルミニウムなど)と渣を除去する処理。

脱ガス用フラックス

溶湯からガスを除去するためのフラックス(助剤)。

タブレット型フラックス

錠剤状に成形されたフラックス。使用量の管理が容易。

⚠️ この工程で関連する不良:

  • ガス巣:水素ガスが原因で発生する内部の気孔(0.2ml/100gAl以上で多発)
  • 介在物:渣(スラグ)が混入して発生する欠陥(アルミナなど)
  • 酸化物:溶湯中に残留した酸化物による欠陥(表層部に多い)
  • ピンホール:微小なガス巣が表面に現れた欠陥(径0.5mm未満)
  • ハードスポット:鋳造品内の局部的に硬い部分。介在物や偏析が原因
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鋳造工程(ダイカスト) 🏭

溶湯を金型に注入し形状を作る最も重要な工程です!コールドチャンバー方式では、適切な射出条件設定が必須です。

鋳造温度

溶湯を鋳型に注入する際の温度。流動性や凝固組織に影響する重要因子。

金型温度

鋳造時の金型表面温度。製品品質に大きく影響する重要因子。

金型温度管理システム

金型温度を一定に保つための自動制御システム。品質安定化に貢献。

自動金型温度調節装置

金型温度を自動的に制御する装置。温度センサーと冷却・加熱機構で構成。

低速射出速度

一次射出速度。スリーブ内の溶湯表面を乱さないよう0.1〜0.5m/s程度に設定。

高速射出速度

二次射出速度。キャビティを2〜80msで充填するため2〜8m/sの高速で射出。

ダイカスト条件の最適化は製品品質の鍵です。金型温度(180〜250℃)、溶湯温度(630〜680℃)、射出速度(2〜8m/s)、比押力(25〜40MPa)、冷却時間(鋳物肉厚×1.5〜2.5秒)などが重要パラメータです。技能検定では必ず出題されます。

金型鋳造

永久型を用いた鋳造方法の総称。重力鋳造、低圧鋳造、ダイカストなどが含まれる。

ダイカスト

溶融金属を高速・高圧で金型に射出して成形する鋳造法。高い生産性と寸法精度が特徴。

コールドチャンバー式

射出シリンダーが溶解炉と分離しているダイカストマシン方式。アルミニウム鋳造に適する。

高真空ダイカスト

金型内を高真空状態にしてから溶湯を射出するダイカスト法。高品質部品製造に適する。

$P^2_P$-$P^2_G$ダイアグラム

プランジャー圧力とゲート圧力の関係を示す図表。ダイカスト条件設定に利用。

$V^2_P$-$V^2_G$ダイアグラム

プランジャー速度とゲート速度の関係を示す図表。ダイカスト条件設定に利用。

G. Ulmerの計算式

ダイカストにおける充填時間や射出条件を計算するための式。技能検定で頻出。

アキュムレータ

油圧システムにおいて、圧力エネルギーを蓄積し供給する装置。ダイカストマシンの射出能力向上に重要。

シャットオフピン法

ピン機構で溶湯流路を遮断するダイカスト法。圧縮性向上と鋳巣欠陥低減が目的。

クランプ力

ダイカストマシンの型締め力。射出圧に耐えるために必要な力。

射出力

ダイカストマシンの射出装置が発生する力。プランジャーで溶湯を押し込む力を指す。

射出装置

溶湯を金型内に高速・高圧で射出する装置。ダイカストマシンの主要構成要素。

自動スプレー装置

金型に離型剤を自動的に噴霧する装置。均一な塗布と生産性向上に貢献。

離型剤希釈圧送装置

離型剤を適切な濃度(15〜40倍)に希釈し、圧力をかけて金型に送る装置。

低圧鋳造

密閉した溶湯を加圧し、金型に下から上へ充填する鋳造法。内部品質が良好。

スクイズキャスティング法

溶湯充填後に高圧力を加えて凝固させる鋳造法。緻密な組織と高強度が特徴。

重力鋳造

重力のみで溶湯を金型に充填する鋳造法。シンプルで経済的な方法。

ロストワックス法

蝋模型を利用した精密鋳造法。複雑形状の高精度鋳造が可能。

減圧鋳造

減圧環境下で行う鋳造法。気孔欠陥の低減に効果的。

VACURAL法

真空吸引と加圧を組み合わせた高品質ダイカスト法。ガス巻き込み低減に効果的。

PFダイカスト法

無孔性(Porosity Free)ダイカスト法。真空技術などを応用した高品質ダイカスト法。

鋳方案

鋳造方法や湯道系の設計。製品品質に大きく影響する重要な技術。

⚠️ この工程で発生しやすい不良:

  • 湯回り不良:溶湯が金型の隅々まで十分に行き渡らない状態
  • コールドシャット:溶湯の一部が金型内で早期に凝固して発生する欠陥
  • 湯じわ:溶湯流れが停滞した際に形成される波状の表面模様
  • 絞られ:鋳造品の一部が十分に充填されずに生じる欠陥
  • 肌あれ:鋳造品表面のざらつきや小さな凹凸
  • 湯境:複数の流れが合流した部分で生じる欠陥や弱点
  • 焼付き:溶湯と金型表面が部分的に融着する現象
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凝固/冷却工程 ❄

凝固の制御が鋳造品質を決定づけます!適切な冷却条件(冷却時間=肉厚×1.5〜2.5秒)と凝固順序の設計が重要です。

指向性凝固

特定方向から順次凝固が進行するように制御する技術。内部欠陥防止に有効。

金型冷却

金型の温度上昇を抑制するための冷却。水や油の循環、空冷などが用いられる。

空冷処理

鋳造品を自然空気中または送風により冷却する処理。組織制御に利用。

チル層

鋳造品の表面近くに形成される急冷凝固層。硬度が高く微細な組織となる。

冷却回路

金型内部の冷却水などの流路。金型温度制御に重要。

表皮形成型凝固

鋳型壁面から表皮状に凝固が進行する形態。金型鋳造に特徴的な凝固形式。

ダイカストでは凝固時間の適正管理が重要です。凝固完了前に金型を開くと鋳造品内部に残留する液相が変形や内部欠陥の原因になります。一般的に鋳物の最大肉厚(mm)×1.5〜2.5秒の冷却時間が必要です。

晶相温度範囲

液相線温度と固相線温度の間の温度範囲。この範囲で液相と固相が共存する。

冷し金

鋳型内に設置する金属片。局所的な冷却促進により凝固制御を行う。

⚠️ この工程で発生する主な不良:

  • 引け巣:凝固収縮による内部空隙(最終凝固部に発生)
  • ざく巣:粗大な内部空隙(肉厚部に多い)
  • 熱間割れ:高温時の応力による亀裂(凝固直後に発生)
  • 冷間割れ:鋳造品が冷却後に発生する亀裂
  • 残留応力:冷却過程で発生する内部応力(変形の原因)
  • 面引け:鋳造品の表面に発生する凹み状の引け巣
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型抜き工程 🔧

凝固完了後、製品を金型から取り出す工程です。抜け勾配(0.5〜1.5°)の確保と離型剤の適正使用が重要です!

抜け勾配

鋳造品を金型から取り出しやすくするための傾斜角度。製品形状に応じた適切な設定が必要。

自動製品取出装置

鋳造後の製品を金型から自動的に取り出す装置。作業効率向上と安全確保に役立つ。

金型寿命

金型が使用可能な回数または期間。経済性に影響する重要指標。

金型保全

金型の性能維持のための点検・修理・管理活動。生産性向上に寄与。

離型剤希釈圧送装置

離型剤を適切な濃度(15〜40倍)に希釈し、圧力をかけて金型に送る装置。

Leidenfrost現象

高温面上の液滴が蒸気膜に支えられる現象。離型剤のスプレーで発生。

離型力

鋳造品を金型から引き離す力。金型設計時の重要検討項目。

型抜きのタイミングは製品品質に大きく影響します。適切なタイミング(一般的に凝固完了後)と十分な抜け勾配(主壁面0.5〜1.5°、リブやボス部2〜3°)の確保が必要です。技能検定では抜け勾配設計と離型剤管理について必ず問われます。

⚠️ この工程で発生する主な不良:

  • 型抜き変形:製品が取り出し時に変形する不良
  • 湯口落ち:湯口部分の破損や欠落
  • はぐみ:鋳造品の一部が欠けた状態の欠陥
  • 割れ:取り出し時の応力による亀裂
  • 表面キズ:型抜き時の擦れによる表面欠陥
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後処理工程 🛠️

鋳造後の仕上げ加工や熱処理を行う工程です。バリ取りと適切な熱処理(T5, T6など)が重要です!

鋳ばり

鋳造品の分割面に発生する薄い金属のはみ出し部分。金型の合わせ面から溶湯が漏れて形成される。

鋳ばり取り

鋳造品から不要な鋳ばりを除去する作業。

バレル研磨

多数の製品を回転容器(バレル)内で研磨材と共に回転させる表面仕上げ法。

仕上げ代

鋳造後の機械加工のために余分に設けられる寸法。加工精度確保のため必要。

木ハンマ

木製のハンマー。バリ取りなど、製品を傷つけにくい作業に用いる。

やすり

金属の研削・仕上げ工具。バリ取りなどに用いられる。

アルミニウムダイカスト製品の熱処理は強度向上に有効です。特にADC12などのAl-Si-Cu系合金は、T5処理(人工時効のみ、170℃×2〜4時間)やT6処理(溶体化処理505℃×2〜6時間+人工時効170℃×2〜8時間)により、引張強さを20〜30%向上させることができます。

T5材

鋳造のままで人工時効処理を施した材料状態。ADC12で最も一般的な熱処理。

T6材

溶体化処理後、人工時効処理を施した材料状態。最高強度を目指す熱処理。

溶体化処理

合金を高温に加熱し、急冷することで過飽和固溶体を得る熱処理。時効硬化の前段階。

時効硬化処理

析出硬化型合金に施す熱処理。溶体化処理後に適切な温度で保持し、硬さを増加させる。

自然時効

室温での時効硬化現象。アルミニウム合金の一部は室温放置でも硬化が進む。

表面処理

金属表面に施す各種処理。防食、耐摩耗性向上、外観改善などの目的がある。

陽極酸化処理

アルミニウム表面を電気化学的に酸化皮膜で覆う処理。耐食性や装飾性向上が目的。

酸洗

鋳造品表面の酸化物や汚れを酸溶液で化学的に除去する処理。表面処理の前処理に用いられる。

⚠️ この工程で発生する主な不良:

  • 熱処理不良:不適切な熱処理条件による特性不足
  • 熱処理ひずみ:熱処理による残留応力の開放で生じる変形
  • 表面処理ムラ:不均一な表面処理による外観不良
  • 過時効:過度の時効処理による特性低下
  • バリ残り:不完全なバリ取りによる外観不良
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検査工程 🔍

製品の品質確認を行う最終工程です。寸法検査、浸透探傷、X線検査など様々な検査方法を組み合わせて製品の健全性を評価します!

非破壊検査

製品を破壊せずに内部や表面の状態を調べる検査法。

CTスキャナ

コンピュータ断層撮影装置。鋳造品内部の非破壊検査に用いられる。

超音波探傷法

超音波を用いた非破壊検査法。内部欠陥の検出に有効。

発光分光分析

試料を加熱・発光させスペクトルを分析する方法。合金成分の定量分析に用いる。

浸透探傷法

表面の微小な割れを検出する非破壊検査法。染料や蛍光物質を用いる。

寸法検査

鋳造品の寸法が設計値内にあるかを確認する検査。各種測定器具を用いる。

ダイカスト製品の品質検査は製品の要求特性に応じて適切な方法を選択します。気密性が要求される部品(エンジン部品など)には耐圧試験(0.2〜1.0MPa)、内部品質確認にはX線検査、寸法精度確認には3次元測定機など、用途に合わせた検査方法の選定が重要です。

全数検査

製品全てを検査する方式。重要部品や高品質要求製品に適用される。

品質保証

製品が要求品質を満たしていることを保証する活動。検査や工程管理が含まれる。

⚠️ この工程で発生する主な不良:

  • 内部欠陥:引け巣、ガス巣、介在物などの内部不良
  • 表面欠陥:湯じわ、コールドシャット、肌あれなどの表面不良
  • 寸法不良:設計寸法からの逸脱
  • 耐圧不良:気密性不足による漏れ
  • 強度不足:機械的特性の不足
  • 外観不良:見栄えに関わる欠陥
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総合的な不良対策(技能検定頻出事項) 💡

ダイカスト技能士2級試験では品質不良と対策についての問題が多く出題されます!体系的な理解が合格のポイントです!

不良を低減するためには、各工程の要因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。特に上流工程での品質作り込みが、最終製品の品質を大きく左右します。技能検定では各種不良現象の原因と対策について必ず出題されます。

ガス巣対策

・溶湯の適切な脱ガス処理の実施
・真空ダイカスト法の採用
・適正な鋳造温度の管理
・溶湯の清浄化維持

引け巣対策

・適切な鋳方案(湯道設計)
・指向性凝固の促進
・押湯の適正設計
・適切な金型温度分布の設計

割れ対策

・適切な製品設計(急激な肉厚変化の回避)
・金型温度の適正管理
・適切なタイミングでの型抜き
・合金組成の最適化

湯回り不良対策

・適正な鋳造温度と金型温度
・湯口や湯道の最適設計
・適切な射出速度と圧力
・合金の流動性向上

コールドシャット対策

・金型温度の適正化
・溶湯温度の適正化
・射出速度の最適化
・湯道系の改善

介在物対策

・溶湯の清浄化(スラグ除去)
・適切なフィルター使用
・金型内のガストラップ設計
・定期的な溶解炉の清掃

湯じわ対策

・金型温度の適正化(一般的に180〜250℃)
・溶湯温度の適正化(630〜680℃)
・湯流れ制御(ランナー・ゲート設計)
・適切な離型剤使用と金型表面状態管理

焼付き対策

・離型剤の適正塗布(15〜40倍希釈)
・金型温度の適正化
・急激な湯流れの防止
・金型表面処理(窒化、PVD処理など)

ダイカスト設備保全

・定期的な射出系点検(プランジャー摩耗など)
・油圧系統の保守(作動油管理、フィルター交換)
・金型のメンテナンス(冷却回路清掃など)
・自主管理点検表の活用

予防保全

・故障や不具合が発生する前に予防的に点検・整備
・日常点検(毎日の目視・聴覚点検)
・定期点検(月次・年次の分解点検)
・予測保全(振動・温度などのデータ監視)